2012年1月25日 (水)

地価公示は年4回必要

2012年1月13日の日経に「金融危機の再発防止」のため各国が「バブル監視へ政策連携」し、住宅価格指数を整備するという記事があった。IMFが2009年、20ヵ国・地域(G20)に情報ギャップを埋めるために住宅価格指数を整備していくことを提案して採択されたとのこと。この指数は各国の不動産に関する消費者物価指数のようなものと思われるが、「正確な住宅価格指数の作成は消費者物価指数などに比べて難しい」とのことである。

かっての日本の不動産バブル、最近のアメリカの住宅バブル、などから、資産価格情報をチェックする統計システムが必要との認識に至ったということで、日本では国土交通省に事務局を設置し、日銀、金融庁、総務省、内閣府、法務省などが参加して住宅価格指数の整備が進んでいるとのことである。

日本ではかって右肩上がりの土地神話に乗って不動産バブルが発生したが、1990年頃バブル崩壊が起こった。その後約20年の歳月が過ぎたが、現在も資産デフレが続いている。しかし、地価公示制度による土地価格の観察によると資産デフレも底バイしているようであり、先になにか光がみえれば、資産デフレも終息しそうな感じもある。そういう点で地価公示制度の役割は大きい。

ところで、国土交通省の不動産投資インデックスガイドラインで総合収益率(トータルリターン)と呼んでいるものは、土地投資、建設投資など多くの投資分野を統合した不動産投資の総合指数(不動産投資指数)を目指したものである。

この不動産投資という枠組みで考えると、住宅投資は土地投資、建設投資を含めた不動産投資であり、不動産投資の中でもウエイトが高く、住宅価格指数は不動産投資指数の中の重要な指数と考えるべきだろう。住宅価格指数は、消費者物価指数の中に500個以上の指数があるように、総合指数である不動産投資指数のなかに含まれる1つの重要な指数なのである。もちろん、土地価格指数もその中に含まれるべき1つの重要な指数と言える。

しかし、建築費指数も、消費者物価指数も毎月公表できるようであるが、住宅価格指数はよくわからないが四半期単位の公表なのかもしれない。しかし、土地価格指数は日本では年1回地価を公示する制度となっていることから毎月土地価格指数を公示することは不可能なのである。しかし、少なくとも3ヶ月に1回、四半期単位の地価公示があれば、土地価格指数は不動産投資指数の中で重要な役割を果たせる。そういう点から、毎月の地価公示は不可能であるが、少なくとも3ヶ月に1回、年4回の地価公示は必要と考える。

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2011年12月20日 (火)

売上高ベースの収益還元法

大都市郊外の幹線道路を走ってみれば、飲食店舗やカーディーラー、ガソリンスタンドなどの沿道型商業施設、時には車が1000台とか入る大型店舗も見かける。こうした店舗はもっぱら売り上げを確保することで成立するので、売上高を基礎にする不動産投資である。

また、都心部でふつうにみられるオフィスビルや賃貸マンションは賃料収入を基礎とする不動産投資である。この不動産投資は賃料収入を収益の源泉とするため、予想しやすいと思われる。そのため、「賃料ベース」の収益還元法は比較的容易に適用できる。賃料収入を前提に期待収益率(ディスカウントレート)を確保できる収益価格で投資すればよいのであるから、わかりやすいのである。

ところが、売上高ベースのビジネスは人件費も大きく、仕入れ費用も大きい投資であり、誰でも経営できるというわけではない。経験豊富な経営者でないと売り上げの確保も難しいのであろう。しかし、変動の大きい売上高を基礎にする不動産投資は、郊外の幹線道路沿いや都心部の商業地には頻繁にみられる。こうした商業施設の投資家は基本的には売上高ベースの収益予想にもとづいた収益還元法(DCF法)を適用していると考えられる。

しかし、売上高を予想することは難しく、会計上の豊富なデータに基づいた予想や経験豊富な経営者の予想でもなければ、容易に不動産投資の適否が判断できないと想像がつく。しかし、「売上高ベース」の収益還元法(DCF法)も一般化は不可能ではない。

幹線道路沿いにかなり頻繁に新たな店舗立地や店舗交代が行われるということはこうした不動産投資が行われているのであり、実際に「売上高ベース」の収益還元法(DCF法)が適用されている、ということなのである。もちろん、そうした店舗立地の専門家は適用していても、「賃料ベース」の収益還元法より収益予想がかなりむずかしいと思われ、「売上高ベース」の収益還元法(DCF法)は誰でも簡単には適用できないのである。

このような収益予想にむずかしさがあることが「売上高ベース」の収益還元法(DCF法)が一般化できない原因と思われるが、一方、「賃料ベース」の収益還元法は直接還元法にまで簡略化されたところが特徴と思う。

もともと商業物件の取引において取引利回りという数値があるが、取引を収入面で手軽にチェックする数値といえる。この手軽さから取引利回りは一般によく使われているが、この手軽さを「賃料ベース」の収益還元法で実現しようとしたものが直接還元法ではないかと考えている。

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2011年11月23日 (水)

FHFAの提訴に関連して

2011年11月7日の日経朝刊に、2011年9月上旬、米連邦住宅金融庁(FHFA)が野村ホールディング現地法人を含む金融機関17社に対し、米住宅金融公社2社(ファニーメイ、フレディマック)が17の金融機関から約2000億ドルで購入したRMBS(Residential Mortgage-Backed Securities)の登録届出書や目論見書に虚偽記載(Falsity)があったとし、損害賠償請求訴訟を行った、との記事があった。

2007年8月16日のエントリーで「アメリカの不動産金融システムにはなんら問題ないと思われますが、むしろ住宅ローン返済チェックシステムに問題があるのではないか。」と書いたので、この訴訟は大変興味深い。特に訴訟の内容にローン返済チェックシステムに関わる事項があるか、という点に注意して、当該記事や野村ホールディングス現地法人などへのFHFAの訴状を見てみた。

この訴状では、虚偽記載(Falsity)は①Owner-Occupancy Data、②Loan-to-Value Data、③ガイドラインを無視したInvestgation(調査)やCredit Rating(格付)などに見られる、としている。この虚偽の内容であるが、①のOwner-Occupancyをチェックしたところ、実際には住んでおらず、投資目的の購入もあり、記載に虚偽があったとのこと、②LTVレシオが100%超のものがあり、規定内の80%以下のものばかりではなかったとのこと、③ガイドラインを無視し、不動産価格上昇を信用し過ぎた格付けなどがあったとのこと、などのようである。

特にローン返済チェックシステムに関してであるが、③のガイドラインを無視した虚偽記載という辺りに該当するのではないかと思われる。住宅価格上昇がある限りは、価格上昇をローン返済分などに充当すれば、ローン返済は少なくて済み、ローン返済能力をチェックする必要は無いのかもしれない。しかし、住宅価格上昇という前提が無くなれば、債務不履行が当然のケースもあり得るので、ローン返済能力の調査は必要不可欠であるので、この調査不備があったということと思われる。関連すると思われるが、③のRMBSの格付けもローン返済能力をチェックせず、単に住宅価格上昇を信じた格付けであれば、3Aとなったのであろう。現在は3Cなどが多いようであるが、ローン返済が困難になり、債務不履行が普通に起こる場合、3Aはガイドライン無視とされても当然と言える。

また、LTVレシオであるが、その時点の住宅価格の影響が強い数値である。この住宅価格はどうやら業者の意見にもとづく場合とAutomated Valuation Model(“AVM”)による場合があるようであるが、詳しくは不明である。ともかく何らかの形で定められた住宅価格に対し、ローン設定が100%を超えたものがあったとのことである。アメリカではLTVレシオは80%が上限となっているようであり、100%超はガイドラインを無視したLTVレシオとなるとのことである。なお、日本では不動産の担保掛目は70%を上限としているはずである。

不動産のプライシングに関連して注意したいのが“AVM”である。コンピューターで自動的に計算するシステムのようであるが、詳しくはわからない。アメリカでは不動産価格をどのように定めているのかが興味深い。

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2011年10月19日 (水)

仙台、松島

最近6名の方々と宮城県の被災地を訪れたが、併せて仙台、松島も訪れた。仙台は初めてであったので、青葉(仙台)城址に行ってきたが、旧仙台城二の丸(現東北大学川内キャンパス)にはかって第二師団司令部があったとのことで、司馬遼太郎の「坂の上の雲」を思い出してしまった。

改めて読み直してみたところ、「坂の上の雲」(四)の「遼陽」では、仙台第二師団は第一軍に所属し、”師団ぐるみで夜襲を敢行して、弓張嶺にのぼり、敵陣地をことごとくうばってしまったことは、世界戦史の奇蹟とされた”とある。また、”日本で最強の兵といえば東北人と九州人であることは、この当時の常識になっていた”などの記述もみられる。なお、遼陽会戦は明治37年8月の終わりごろのことである。

また、同じく「坂の上の雲」(六)の「黒溝台」で、明治38年1月の終わりごろの黒溝台会戦では、弘前の第八師団(兵は青森、秋田、山形、盛岡の出身者で、師団長は立見尚文)が師団ぐるみの夜襲によって黒溝台から敵を退却させたとのことである。仙台第二師団は”弘前師団を包囲している敵を追い、立見の黒溝台への行動を容易にした”などの記述がある。なお、”黒溝台会戦の戦闘経過の惨烈をつぶさに見ていくと、かれら東北の若者たちが全日本軍をその大崩壊から救ったその動態のひとつひとつを記述したいという衝動をおさえきれない”とあり、強い印象を受ける。

また、当地には旧制第二高等学校があり、第二師団と広瀬川を挟んだ位置に校舎が建っていたとのことで、この二高は東京の旧制一高、京都の旧制三高につぐものとある。それにしても、第二師団と言い、旧制二高といい、仙台城二の丸といい、仙台は「二」に縁があるようである。

さて、仙台から気仙沼、南三陸、石巻を回り、松島を通って帰ってきたが、太平洋沿岸地帯の様子に比べ、松島は日本三景の写真のままであった。地図をみると松島は湾の出口に大きな島がいくつもあり、津波を防いだようで、地元の方は松島は天然の要害と言っていた。何も知らないものとしては、てっきり松島の松も津波に持って行かれたとなんとなく思っていたが、松にも松島にも殆ど影響がなかったようである。

なお、松島の瑞巌寺は臨済宗妙心寺派の古刹で伊達正宗の菩提寺とのことであるが、創建は1000年以上前の828年とのことであり、最近世界遺産に登録された中尊寺といい、長い歴史を持つ東北のことを改めて再認識した訪問であった。

また、気象庁震度データベースで調べたところ、今回の地震の宮城県内の震度分布は、大体であるが低くて震度5強、最大で震度7であり、宮城県は広範囲にわたって大きな震度となっているようである。

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2011年9月23日 (金)

リフォーム市場には新しい専門職が必要

既存建物の取引の重要事項説明で一般的に宅建主任は建物に何か起こっていることに気づいても、建物のことが完全にはわからないため、建物の現状を十分説明できないと考えられ、買主売主間のトラブルを完全には防ぐことができないと思われる。むしろ、一級建築士が不動産取引に立ち会うとこうしたトラブルは防ぐとおもうが、設計者として育てられた建築士に新たに不動産取引に関わる動機が生まれにくい。

むしろ、建築士の育成の現場である大学などの教育機関に、宅建主任が行う重要事項説明書や不動産取引のルールなどを網羅した科目を設置できれば、建築士が不動産取引に関わることは比較的容易になると思われる。しかし、教育機関にすぐに不動産市場に関する教育を期待するのは難しい。

国交省は2011年7月1日組織改変を行い、土地・建設産業局をつくった。土地市場課、不動産市場整備課、建設市場整備課などがあり、不動産市場の活発化や建設産業の活性化を目指すものと思われるが、特に既存住宅のリフォーム市場や不動産金融市場の整備が進むものと期待したい。

住宅リフォームは現状の調査とリフォームの「みたて」が肝要であり、新築住宅を設計するより難しいと思われるので、建築士なら誰でもというわけにはいかない。それなりの研修を受けたリフォームを担当する調査建築士(サーベイ・プランナー)が既存建物を調査し、リフォームプランをつくるなどしてトラブルを未然に防ぐことが必要である。思いもかけない工事が必要になるようなことはあってはならないのであり、現場施工で行うリフォームは施主とトラブルが起こりやすいと考える。十分な建物チェックと明確な理由があるリフォームプラン、リフォーム積算が必要なのである。

また、売主買主などの取引当事者に対する責任もあるので、建物のことを知らない宅建主任では建物のリフォームの趣旨説明ができない可能性があり、調査建築士(サーベイ・プランナー)に重要事項説明の責任もあると思われる。

そういう点からこの新しい職種である調査建築士(サーベイ・プランナー)は既存建物市場に必要な新しい専門職と考えるのである。

なお、調査建築士(サーベイ・プランナー)はイギリスのサーベイヤー(Surveyor)から筆者が思いついた名称である。

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2011年8月27日 (土)

建築士の知識と不動産取引

日本では、建築士の知識は設計や建設のための知識と考えているためか、せっかくの知識が不動産取引に生かされていない。あるいは、建築士は不動産取引と畑が違うので決してそこに入らないようにしているためかもしれないが、建物を設計したり建設したりする知識が不動産取引にまったく生かされない現状にある。

中古住宅などの不動産取引に関わる宅建主任が行う重要事項説明においては、建物に関する説明は建築の知識が要らない事項ばかりである。それでも取引のトラブルが多いようであるので、とても建築知識を活用して建物のトラブルを防ぐという余裕は無いのであろう。もし、中古住宅など建物が関わる取引に建築士が関わっていれば、建物に何が起こっているかわかる場合もあると思われる。しかし、現行制度では建築士が不動産取引に関わる必要があるとは考えていないようである。

現在の制度はあたかも設計建設と取引とは建物を作る側と売る側で、まったく関係なくてもなんら問題無いと考えているようなのである。しかし、既存建物が流通する市場の重要性が強まっている昨今では、建築士の知識は不動産取引に必要不可欠と考える。

たとえば、直前のエントリーで住宅瑕疵担保責任保険法人の業務では保険引き受けに際して建物を調査するが、これは建築士が担当するようである。保険の新設を含め、建築士の知識を活用して、不動産取引におけるトラブル防止を図ることは大変良いことと思われ、今後が期待されるところである。

また、不動産金融商品のREIT組成にあたっては建物調査が必須とされ、その結果をまとめたエンジニアリングレポートにもとづいていなければ、REITの商品価値は責任のもてないものになると思われる。これはBELCA(公益社団法人ロングライフビル推進協会)がビルの建築仕上げや設備などの診断技術者を登録し、彼らにビルの調査を任せるのであるが、建築士の知識を活用する重要な例である。

また、住宅ローンを担保にした社債など新たな不動産金融商品が発行されるようになれば、ますます建築士の知識が不動産取引に必要になると思われる。ローンを引き受ける価値があるかどうか、建築士の知識でチェックしておくことで、景気が悪くなっても、瑕疵が発見されても、住宅の価値が担保価値を下回らないことを確認しておく必要がある。

不動産が相対取引だけで取引される時代ではなくなり、金融商品化され、誰でも買える金融商品になると、当然商品の信頼性が高くないといけない。たとえ、瑕疵が発見されても瑕疵担保保険で瑕疵をなくすることができれば、その商品の信頼性は失われないと思われる。今後、不動産金融商品の拡大にあわせて建築士の知識が不動産取引に活用されることと期待したい。

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公公益社団法人 ロングライフビル推進協会
益公益社団法人 ロングライフビル推進協会
社団法人 ロングライフビル推進協会

2011年7月17日 (日)

既存建物価値に係る情報は大歓迎

国交省の補助事業である「既存住宅流通・リフォーム推進事業」(既存住宅タイプ)は、①住宅瑕疵担保責任保険法人による既存住宅の現場検査、②住宅履歴情報の登録や蓄積、③既存住宅売買瑕疵保険への加入などを行う事業で、住宅性能の向上をするリフォーム工事費用や建物現場検査費用、住宅履歴情報登録費用を一定割合補助するというものである。ここには①で既存住宅を建築士などが現場検査することが盛り込まれており、さらに③で既存建物価値に関する住宅履歴情報の蓄積が盛り込まれている。

この「住宅瑕疵担保責任保険法人」は保険の引き受けに当たって、既存建物の現場検査でかなり細かい検査を行い、検査に合格した場合に保険を引き受ける保険法人とのことで、検査で得られた情報に加え、リフォームなどが行われた場合はそのリフォームコスト情報なども住宅履歴情報として登録されるものと思われる。

しかし、住宅履歴情報は、「住宅履歴情報の蓄積・活用の指針」のとおり、新築時の建物図面や確認申請書類なども含め、その後の簡易な補修や屋根などの大規模な修繕履歴、さらにリフォーム工事などの履歴情報を言うようである。そのため、この情報は住宅所有者の個人情報であり、容易に公開されるものではないと思われる。住宅所有者が住宅履歴情報を所有し、リフォーム業者や建物補修業者などが履歴情報活用するとしても、住宅所有者が情報を提供した場合のようである。

しかし、住宅履歴情報が、既存住宅流通市場で所有者からたとえば買主候補や仲介業者に公開されると、安心でき、信頼できる住宅として高く売れるかもしれない。信用できない住宅に比べ、信用できる住宅はそれなりの価格が期待できるからである。

あるいはまた、住宅履歴情報のうちリフォームコストが国交省の不動産取引価格調査などで公開されると、建物価格が合理的に求められ、結果として土地価格情報など不動産情報が合理的な内容となり、精度向上が期待できるのである。

ところで、不動産売買に際して宅地建物取引業者が買主に交付する重要事項説明書には、こうした建物に関する詳しい情報がないので、これを改善すればよいとも思われるが、無理なのであろう。特に既存住宅売買に際し、建築士に建物検査を頼めば同じことが可能であるとも考えられるが、瑕疵や建物検査、リフォームなどに責任を持つことは、新しい保険法人の仕組み以外には無理なのであろう。

しかし、それにしても新しい保険法人により既存建物価値に関わる不動産情報が蓄積されることは、従来あまりにも少なかった既存建物価値に関する情報が増加することであり、歓迎すべきことと考える。

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2011年6月 5日 (日)

エンジニアリングレポートに基づいたリフォームコスト

先のエントリーでリフォームコストが不動産販売情報に加わると、大変役立つのではないか、という点に触れましたが、最近古い知り合いからのメールに触発されて、中古住宅などのリフォームコストがエンジニアリングレポートに基づいて求められ、「合理的で説明可能な価格」(reasonable and accountable price)が実現しているならば、安全なカバードボンドの裏づけ不動産になることもできるのではないか、ということに気づきました。

中古住宅でも中古マンションでも、取引価格は土地と建物を含んだ内容であるため、それを双方に配分する場合、「新築中古価格ーリフォームコスト=建物価格」を基本とすることで、「取引価格ー建物価格=土地価格」という配分で得られた土地価格は合理的価格となる。結果として、その土地価格を基礎にした不動産価格情報も合理的で説明可能な価格情報になると考えられる。

この「合理的で説明可能な価格」の中古住宅であれば、ドイツの抵当ファンドブリーフ債(カバードボンド)のような安全な不動産金融商品が組成できるはずと考えられる。安全な投資を選ぶ人が多い日本では、ドイツの抵当ファンドブリーフ債のような債務不履行を起こさない不動産金融商品が必要なのである。

ところで、BELCA(社団法人建築・設備維持保全推進協会)と社団法人日本ビルヂング協会連合会が2007年に改定した『不動産投資・取引におけるエンジニアリングレポート作成に係るガイドライン』は建物の現況調査、修繕更新費用、再調達価格査定までの報告書を想定しているようであり、リフォームコスト算出までは含んでいない。確かに建物の現況の調査報告書があれば、それに基づいたリフォームプランやコスト算出もできるので、それから先は対象としていない、ということなのだろう。

なお、リフォームプランであるが、エンジニアリングレポートでは違法性調査が行われるので、違法性がある場合、違法性がない建物にするリフォームプランでなければ、合理的なプライシングができなくなる。したがって、違法性がない住宅にリフォームするために建て替えする必要があるならば、現在価値はゼロ、場合によってはマイナス、になることもある。それでも合理的な建物価格に基づいていれば、配分によって求める土地価格も合理的なものとなる。

今後、仮に日本でもドイツの抵当ファンドブリーフ債のような安全なカバードボンドが発行できるようになるならば、中古住宅にエンジニアリングレポートに基づくリフォームプランやリフォームコストが添付されている場合、カバードボンドを裏付けることができるのではないか。

そのように考えると、不動産の金融商品化の推進のためにはエンジニアリングレポートとリフォームコスト算出が重要な役割を持っていると考えられるので、場合によっては中古住宅を金融商品化する場合には、これらを義務付けることが必要なのかもしれない。

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2011年5月25日 (水)

ディスカウントレートとキャップレート その3

先のエントリーでディスカウントレートとキャップレートの違いに触れたが、ここではDCF法と直接還元法では投資期間の考え方が根本的に違うが、いずれも式の中でディスカウントレートを使っていることから、この2つのディスカウントレートをどう考えるべきなのか、という点を整理しておきたい。

新方式と呼ばれる直接還元法はDCF法を原型とし、投資期間を無期限とする場合の考え方であり、無期限の純収益を還元利回りr(キャップレート)で還元して収益価格を求めるものである。この還元利回りr(キャップレート)は割引率yから元本変動率gを控除する形(r=y-g)をもっているが、元本変動率gを賃料変動率g’に置き換える仮定(r=y-g’)を採用している。その結果、割引率yはy=r+g’となっている。

一方、DCF法はたとえば10年、30年とかの投資期間のキャッシュフローを投資期間の期待収益率(割引率ディスカウントレート)で割り引いて収益価格を求めるものである。この割引率yは還元利回りrに元本変動率gを加えた内容(y=r+g)となっており、これが直接還元法の原型である。期待収益率は株式投資収益率や国債や社債などの収益率(y=r+g)と同じ内容である。投資期間も同じ程度なので、投資家にはDCF法はわかりやすい内容となる。

さて、この2つの方式のディスカウントレートは明らかに異なる内容であり、また、投資期間もたとえば10年と無期限という違いがある。しかし、DCF法のディスカウントレートも直接還元法のキャッププレートが含むディスカウントレートもパーセント表示であることから、2つをスプレッドで説明できるか、という点が興味を引くところである。

日本の10年国債と30年国債のスプレッドは約1%で30年物が高い形となっている。債券の利回りは年限の長いものが短いものより高い収益率(利回り)となっているのである。この傾向からいえば、10年の投資期間の割引率より、超長期の投資期間の割引率が高いのは当然と言える。

直接還元法の割引率(y=r+g’)は約5%であると仮定する。投資期間が無期限というのは、30年~60年程度の投資が無限に継続すると仮定することで、無期限を30年に置き換えるとすると、10年の投資期間の割引率(y=r+g)との格差は債券投資と比較すれば約1%とするのが合理的となる。

つまり、DCF法で10年の投資期間のディスカウントレートはy=4%、直接還元法の無期限の投資期間のディスカウントレートはスプレッド1%を加算して、y=5%とするのが合理的ということになる。一方直接還元法のキャップレートはr=y-g’なので、賃料変動率g’をたとえば0%とすれば、r=5%となる。

この2つの収益還元法で使うディスカウントレートの違いは、2つの収益還元法の投資期間が根本的に違うという点からきている。

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2011年4月29日 (金)

不動産取引は相対取引

2011年3月25日の日経朝刊に”中国の国家発展改革委員会は不動産業者に対し、住宅を売り出す際の価格を正確に開示するよう義務付けることを決めた。住宅価格の高騰が続くなか、販売業者が価格を明示せずに高値で売る行為が横行しているためだ”との記事があった。このなかの「売り出す際の価格を正確に開示する」というところであるが、考えてみるとなかなか興味深い。

日本ならばマンションや戸建住宅を売る場合、普通に新聞広告などで売出し価格を公表し、その価格で販売するケースが多く、仮に多少おまけするケースもあるとしても、大きな値引きは無理であろう。バブル崩壊後、売れ残ったマンションを6割ほどの安値で売ったことが裁判沙汰になったケースもあった。こういう日本の常識からみると、中国の不動産を売るやり方はかなり粗いのかもしれない。相手を見て値段を上げたり、下げたり、自由自在に販売しているのかもしれない。

中国やインドでみやげ物を買ったことがある方も多いと思われるが、値札どおりに誰も買わないことを前提に、高い価格をまず示し、そこから値引きすることが普通である。高く売ることが売る者の腕の見せ所であり、安く買うのが買う者の腕の見せ所なのである。しかし、どこかで価格が折り合い、買いたい者に商品が売れていくのは、見ているだけでも、やはり面白いものである。不動産とみやげ物では価格の内容が違うと思うが、売る者と買う者の交渉はやはり似たようなものではないだろうか。

住宅をできるだけ高く売ろうとする販売側を言い負かし、高い価格を値切って買うのが普通となると、なかには買いたいことが見抜かれて相当高値で買うケースもあるということなのかもしれない。みやげ物位の総額なら高値でつかまされてもなんとか我慢できるが、マンションを他の買主と比べて高値でつかまされてはたまらないと想像できる。

このような相対(あいたい)取引の本場の中国では、成立した不動産価格を買主から聞くことは無理であろうし、売主も言うことはないと思われるので、不動産の価格は容易に開示されるものではないと思われる。日本では現在、国土交通省が不動産の買主(すべての買主!)から買った価格をアンケート調査しているが、それでも回答は半分に満たないようである。日本でも不動産の取引価格は秘匿しておきたいものなのであろう。

しかし、REITなどの不動産金融商品は、それを裏付ける不動産の取得価格や売却価格を秘匿したままではとても金融商品にはならない。REITでは裏付け不動産の情報は当然であるが開示されている。

日本は、住宅などの不動産を住宅ローン担保社債などを裏付けるものにすることで不動産市場を活発化する以外に道はないと思うのであるが、そのためには日本でも住宅などの取引価格の開示が普通にならなければならないと思う。もちろん、価格以外の不動産情報も明確にすることが必要になってくると考えるが。

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